食中毒の正しい対処法|水分を補給する!下痢止めは飲まない!
原田 久 医師よしひさ内科クリニック院長食中毒の基礎知識
食中毒とは何か
食中毒の定義
食中毒とは口を通して、何らかの有害なもの(細菌・ウイルスなど)が体内に入ったことが原因で起こる下痢や嘔吐や発熱などの病状をまとめた呼び名です。主な有害なものには細菌やウイルスがあげられます。
食中毒と食あたりの違い
食中毒は医学用語で、食あたりは一般用語のため厳密な違いはありませんが、あえて分けるとすれば下記のようになります。
・食中毒と表現されるもの
主に特定の細菌やウイルスのような強い毒素が原因で起こります。
複数人で同じ食品(原因菌・ウイルスが付着したもの)を食べた場合、ほとんどの人が発症します。
・食あたりと表現されるもの
主に通常では感染しないような弱い菌、雑菌が原因で起こります。一般的に無菌の食べ物はありません。少し風邪を引いて抵抗力が弱っていたり胃腸が荒れていたりする場合などに、弱い菌に感染し発症してしまうのが食あたりとも言えます。
複数人で同じ食品(弱い菌や雑菌が付着したもの)を食べた場合、抵抗力が弱った人だけが発症します。
食中毒が流行する季節
夏から秋までは、温度・湿度が高いため細菌が繁殖しやすく食中毒が流行する季節です。冬は、ノロウイルスのような乾燥に強いウイルスが流行する傾向にあります。
食中毒の対処法
食中毒になったら
・正しい対処の仕方
水分を補給する
嘔吐や下痢になったら必ず水分を補給しましょう。少なくとも身体から外に出た量を補給しないと、脱水症状になる恐れがあります。水を飲む際は、ゆっくり少しずつでかまいません。
下痢止めは飲まない
嘔吐や下痢は身体に侵入した有害なものを排除しようとする反応です。下痢止めはその働きを妨げることになるので、飲まないようにしましょう。
・子どもを観察する際の注意点
脱水症状に注意
子どもは身体の大きさに対する水分の割合が成人に比べて多いのが特徴です。そのため下痢や嘔吐が続くと脱水症状になりやすく、年齢によっては自分から喉の渇きを伝えることができないため注意深く観察していく必要があります。
以下の状態は脱水症状になりかけている疑いがあります。見逃さないようにしましょう。
- 口腔粘膜がかわいている
- 目がかわいて、涙がでていない
- ぐったりしている
医療機関を受診する目安
・水分の補給ができない
水を飲んでも嘔吐により吐き出されてしまう場合があります。水分を補給できないままでいると脱水症状になってしまいますので、急いで医療機関を受診しましょう。
・嘔吐や下痢が10回以上続く
目安として嘔吐や下痢が1日10回を超えた場合は医療機関を受診しましょう。嘔吐・下痢はあって水分摂取ができなければ回数は関係ないので、あくまでも目安として水分摂取ができないようであれば、それも受診しましょう。
・腹痛が続く
嘔吐や下痢がおさまったとしても、腹痛が続く場合は医療機関を受診しましょう。
・高熱がある
嘔吐や下痢に加えて、高熱があると、さらに脱水症状になりやすくなります。
医療機関を受診しましょう。
※受診前に準備しておくと安心なこと
- 2、3日間の献立を思い出しておく。
- 食中毒で医療機関を受診する場合、2,3日間の献立を思い出しておきましょう。
- 診察時に医師から必ず確認されますので、事前にまとめておくと安心です。
- 手を消毒する
- 素手で調理した食品の残り物は、再加熱しても食べない
- 調理時によく加熱する
- 低温で管理する
- 調理時によく加熱する
- 生肉は食べない
- 鶏卵は分別して保管する
- 生肉は食べない
- 手を消毒する
- 調理時によく加熱する
- 素手で調理した食品の残り物は、再加熱しても食べない
- 調理時によく加熱する
- 調理時によく加熱する
- 水質検査の実施を確かめる
- 貝類を生で食べない
- 手を消毒する
主な食中毒と予防法
食中毒は、細菌やウイルスの種類によって症状が異なります。注意が必要な食品と一緒に食中毒を予防するポイントを抑えましょう。
ブドウ球菌
注意が必要な食品
素手で調理した食品(お弁当、おにぎり、サンドイッチ)
概要
ブドウ球菌は、人間の皮膚に常に存在している細菌です。細菌は手などから食品へ付着し増殖します。
潜伏期間
30分~6時間
症状
嘔吐・下痢・腹痛が主症状です。1日1回~数回で終わることがほとんどです。
症状が続く期間
発病から1~3日で回復に向かいます。
予防のポイント
手洗い後に、アルコールで手の消毒もしましょう。
ブドウ球菌は熱に強く、加熱しても死滅しません。疑わしいものは食べずに破棄しましょう。
腸炎ビブリオ
注意が必要な食品
加熱されていない魚介類(さしみ、しらすなど)
概要
腸炎ビブリオは海中に常に存在する細菌です。この食中毒は夏~秋にかけて多発します。
潜伏期間
8~24時間
症状
嘔吐がある場合は1日1回~数回で終わることがほとんどです。下痢は1日数回~10回以上続きます。
症状が続く期間
発病から12時間ほどで回復に向かいます。
予防のポイント
サルモネラ菌
注意が必要な食品
鶏卵、鶏肉 ※夏場の自家製マヨネーズも要注意
概要
サルモネラ菌は動物が常に保持している細菌です。
潜伏期間
6~72時間
症状
38度~40度の発熱があり、時に血便がでる場合もあります。
症状が続く期間
発病から1~2日で回復に向かいます。
予防のポイント
サルモネラ菌が鶏卵の表面に付着している場合があります。冷蔵庫内では、鶏卵を他の食べ物と接触させないように保管しましょう。
カンピロバクター
注意が必要な食品
生肉(鶏、牛、豚)
概要
カンピロバクターは、動物が常に保持している細菌でサルモネラ菌と似た特徴があります。
潜伏期間
2~7日
症状
下痢がとまった後、断続的に腹痛が数日間続く場合があります。
症状が続く期間
不明
予防のポイント
手洗い後に、アルコールで手の消毒もしましょう。
ウェルシュ菌
注意が必要な食品
作りおきした料理 ※学校給食なども
概要
ウェルシュ菌は、人や動物の鼻などにいる細菌です。冷蔵、冷凍された作りおきの料理に付着していた場合、再度加熱した時に増殖します。
潜伏期間
5~24時間
症状
症状が続く期間
発病から1~2日で回復に向かいます。
予防のポイント
調理時に十分加熱していれば、菌を死滅させることができます。
疑わしいものは食べずに破棄しましょう。
ボツリヌス菌
注意が必要な食品
加工された保存食品(ソーセージ、真空パック食品、瓶詰め食品)
概要
ボツリヌス菌は熱の通っていない保存食にいる細菌です。熱に弱く、加熱さえすれば防ぐことができます。
潜伏期間
5時間~72時間
症状が続く期間
不明
症状
呼吸困難、ものが2重に見える、うまく話すことができなくないなどの神経症状が起こります。
予防のポイント
調理時に十分加熱していれば、菌を死滅させることができます。
病原性大腸菌(O-157)
注意が必要な食品
肉・生乳・野菜・井戸水など原因となる食品は多種に渡ります。
概要
病原性大腸菌(O-157)は人や動物の腸管内にいる細菌です。幼児やお年寄りが病原性大腸菌(O-157)の食中毒になると脳症などが併発し、死に至る恐れがあります。
潜伏期間
4時間~72時間
症状が続く期間
不明
症状
時に時に血便がでる場合もあります。
予防のポイント
調理時に十分加熱していれば、菌を死滅させることができます。
利用している水の水質検査が実施されているか確かめましょう。
ノロウイルス
注意が必要な食品
加熱されていない貝類(生カキ)
概要
ノロウイルスは貝類が保持しているウイルスです。近年では、便や嘔吐物で排出されたウイルスによる2次感染が増加中です。冬を中心に流行します。
潜伏期間
12時間~48時間
症状が続く期間
不明
症状
予防のポイント
手洗い後に、塩素系洗剤で手の消毒もしましょう。