早く眼科を受診した方がいい充血とは?
和田 光正 医師和田眼科クリニック 院長[※2019年7月5日記事更新いたしました]
目の充血はどの方でも経験したことがあると思います。普段充血を経験したことがない方が急に充血したりすると、眼科を受診される方がたくさんおられますが、なかには忙しくて、充血程度は大丈夫だろうと思われる方も多いのではないかと思います。
目の充血にも種類があり、べたっと赤くなるものから、もともとある白目の血管が太くなって赤くなるものもあります。
見てわかる場所のいつもと異なる状態は、充血に限らず心配になるものですよね。でも実際には、充血のほとんどは出血によるものが多く、出血によるものであれば心配ないのですが、なかには治療が必要になる病気による充血もあるので、すべてが心配なしとは言えません。
その充血が大丈夫かどうか、治療が必要であるか無いかは、自分では判断できないことがありますから、眼科を受診してもらい、本当に問題がないものであることがわかれば安心です。
充血がどうして起こるのか、どのような充血があれば眼科を受診した方がいいのか、それらについて解説したいと思います。
1.充血の種類と特徴
目の充血は大きくわけると2つになります。
1)結膜下出血
見た目はべたっと赤くなります。原因は、白目(強膜)を覆っている透明な膜(結膜)の中にある血管が切れることで、傷ついた血管から出た血が結膜の下に溜まった状態になっています。
血管が切れた時にチクッと痛むこともありますが、長く痛みが続くことはありません。出血の量が多い時には、少し結膜が盛り上がった状態になることがあり、その場合には多少の違和感がでることもあります。
広がった出血は重力によって下に広がっていったり、出血の量が多い時は強膜全体が赤くなったりすることもあります。
2)結膜充血
もともとある結膜の血管が拡張した状態になったものです。目になんらかの病気がおこって、そのひとつの症状として充血がおこります。
もともとの病気の種類や程度によって、軽度の充血のこともあれば、強い充血になることもあります。大抵は病気の重症度に伴い、充血の程度も強くなる傾向にあります。他の症状としてめやに、痛み、目がかすむなどの症状がでることもあります。
2.ほとんど心配ない充血は
結膜下出血は、大抵の場合は問題がなく、約1〜2週間で元の白い状態に戻ります。目に何かが当たったり、目を擦ったりした時に血管が傷つくことが原因になることもありますが、年配の方におこることが多いので、老化による目の変化が主な原因になると思います。
見かけが気持ち悪いので心配される方が多いのですが、出血のみの場合にはまず問題ありません。
ただし、強く目をうったり、何かが強く目にあたり出血したものは、目の中に他の異常(網膜に穴があいたり、目の中に出血をおこすなど)を来すことがありますから、そのような方は眼科受診が必要になります。
3.早く眼科を受診した方がいい充血は
結膜の血管が拡張する結膜充血は、1時間程度で無くなったり、繰りかえさなかったりするものは心配ありませんが、充血が1日以上続く場合や、他の症状を伴う時は眼科を受診された方がいいと思います。
めやに、ゴロツキ感、かゆみを伴う時は感染性やアレルギー性結膜炎が疑われます。感染性結膜炎は、細菌やウイルスが原因でおこる結膜の炎症で、かぜをひいたり、体調が悪い時におこることが多いようです。
また、ウイルス性の場合は、感染力が強く、他の人にうつしてしまうものもあります。ですから、結膜炎になった時には、細菌かウイルスかどちらが原因なのか判別が難しいこともありあすから、念のため、他の人にうつさないように、タオル等は他の人と同じものは使わない、目のまわりを触らない、触った時はすぐ手を洗うようにしてください。治療には、細菌性の場合には、抗生剤の点眼、消炎するための点眼を使用します。ウイルス性の場合には、ヘルペスウイルス以外に効果がある薬剤はありませんので、自然によくなるのを待つ必要があります。
アレルギー性結膜炎は、アレルギーが原因でおこるもので、よく知られているのは、2月から5月におこるスギやヒノキの花粉によるものがあります。それ以外でも、それぞれの季節によって飛散する花粉があったりするので、その時期のみ症状がでるものを季節性アレルギーといいます。
また、身のまわりにアレルギーの原因になるものがあり、年中アレルギーをおこす方もいます。ハウスダスト、ペットの毛などが原因となるもので、これらは通年性アレルギーといいます。 治療には、抗アレルギー点眼、症状が強い人にはステロイド点眼、免疫抑制のための点眼を使ったりします。治療とうよりは、予防になるのですが、眼鏡を装用することにより、アレルギーの原因となるものが目に入りにくくしたりすることが出来ますし、最近では花粉症用の眼鏡がありますから、特に症状が強い方は眼鏡を使用した方がよいと思います。
痛みがあり、充血の範囲が白目の右側のみ、または左側のみと充血が部分的なものは、強膜に炎症をおこす上強膜炎という病気のことが多いと思います。数週間たっても充血がよくならないといった場合には、上強膜炎の可能性も考えた方がよいかもしれません。治療はステロイド点眼にて軽快することがほとんどですが、程度の強い場合には、ステロイドを内服して頂くこともあります。
黒目(角膜)にキズがついていたり(角膜びらん、角膜潰瘍)、そのキズに感染をおこしていたりする(角膜炎)と強い充血をきたします。角膜は神経が豊富に存在している部位ですので、痛みが強く、涙が多く出たりします。
特に注意が必要とするのは、使い捨てコンタクトレンズを装用している方で、角膜を傷つける機会が多くなること、コンタクトが不潔になっている場合があるからです。また、コンタクトを装用していると、コンタクトで角膜が覆われているため、コンタクトを装用している時にはキズがついていても痛みが出にくくなることがあります。
そうすると、角膜炎がかなり悪くなってから眼科を受診されたりしますが、そのようになっていては、治療が難しく、場合によっては失明してしまうこともあります。ですから、コンタクトレンズを装用している方で充血がある場合には、早く眼科を受診して頂くことが大切になります。
充血や痛みが強く、ひどい頭痛や目がかすむ時は、急に眼圧が上昇する急性緑内障発作を考える必要があります。目の中には水で満たされている部位(前房)があり、その水は常に循環しています。その水の出口(隅角)は広い人もいれば、狭い方もいます。隅角がもともと狭い人が、ある日突然隅角が塞がってしまうことがあり、そうなると、目の中に水が溜まり過ぎることになり、目が非常に硬くなって(正常の眼圧の倍以上の眼圧になる)しまい、上記のような症状をきたします。好発年齢は中年から高齢の方で、目が小さい遠視の方に起こりやすい傾向があります。
この状態を放置すると失明することもあります。よって、早期の治療が必要で、レーザーで虹彩に小さな穴を開ける(レーザー虹彩切開術)治療や、最近では白内障手術を行うこともあります。
充血や目のかすみ、まぶしさ、軽度の痛み、視力低下を伴うときは目の中の炎症(ぶどう膜炎)が原因となっていることもあります。ぶどう膜炎をきたす原因はたくさんあり、原因を特定するには眼科や場合によっては内科等での検査が必要になります。治療は主にステロイドの点眼を使用しますが、炎症の程度が強い場合や範囲が広い場合には、ステロイドの内服、点滴、目に注射を行ったりすることもあります。
これ以外にも充血をきたす疾患はありますが、上記のものが特に充血をきたした時に、早く眼科を受診した方がよい疾患になります。いずれの疾患でも、早く治療を行うことによって回復することがほとんどですが、治療が遅れると治癒するまでにかなりの時間が必要になることや、場合によっては失明することもありますから、できるだけ早く眼科を受診してください。
4.まとめ
充血は、心配の無い出血のことが多いのですが、なかには失明につながる病気がおこっている可能性もあることを念頭において頂き、早く眼科を受診しておけば良かったと後悔することがないように、忙しい日常のなかでも、早く時間を確保して頂いて眼科を受診してください。