子宮体がんとは?|産婦人科医が説明します
浅川 恭行 医師浅川産婦人科医院 院長子宮体がんについて
子宮体がんとは
子宮体がんは子宮の「奥」にできるがんで、子宮内膜がんとも呼ばれます。その頻度は近年急速に増加傾向にあります。未妊の女性、卵巣機能不全で排卵障害(無排卵)のある女性、多のう胞性卵巣症候群、女性ホルモン(エストロゲン)の長期内服、糖尿病、高度肥満の女性、家系内に子宮体がんや大腸がんの方を多数認める方(Lynch症候群)では、子宮体がんになるリスクが高いと考えられています。
子宮体がんの診断
子宮体がんの初発症状は不正性器出血が多く、特に閉経後の不正性器出血です。しかしながら閉経前であっても、前述のようなリスクのある女性の場合は注意が必要です。
子宮体がん検診の方法としては、子宮体部から採取する細胞診や腟から調べる超音波検査で子宮内膜の厚さを測定する方法などがあります。子宮体がんの診断には、内膜組織診が必須であり、さらに血清腫瘍マーカーの測定やMRIおよびCTで腫瘍の広がり具合を検査します。
子宮体がんのMRI像
子宮体がんの治療
子宮体がんの手術療法
子宮体がんの治療は、原則としてまず手術(根治術)を行います。手術の方法としては子宮と両側の卵巣・卵管摘出、骨盤リンパ節郭清(摘出)、また症例によって傍大動脈リンパ節郭清(または生検)や大網切除術を行います。
子宮の摘出方法は、腹式単純子宮全摘出術が選択される場合が多く、準広汎子宮全摘出術もしくは広汎子宮全摘出術を選択する場合もあります。またリンパ節郭清を必要としない、つまり省略できる場合もあります。
子宮体がんの手術でリンパ節郭清を行うか否かは、手術後の合併症であるリンパ浮腫やリンパ嚢胞の発症に関わることであり、患者さんの術後のQOLに大きく影響します。
子宮体がんの術後療法
手術後、病理組織検査の結果に基づいて組織型(がんの顔つき)や進行期(がんの広がり)を決定し、再発のリスクが高いと考えられる症例については、術後治療を行います。
術後治療の方法には放射線治療と抗がん剤治療がありますが、わが国では抗がん剤治療が多くの施設で行われています。当科においても、とくにリンパ節郭清を施行した患者さんの場合、放射線治療を行うと合併症や後遺症が強くなることから、主として抗がん剤治療を行っています。
抗がん剤は、プラチナ製剤とタキサン製剤の併用療法を選択することが多いです。
子宮体がんの温存療法
20歳代~30歳代でまだ妊娠・分娩をしていないのに、子宮体がんが見つかることがあります。その場合、いくつかの基準を満たす場合、高用量のプロゲステロン製剤を用いたホルモン治療を行い、妊孕性(にんようせい)の温存を図ります。
このホルモン治療では、治療期間中に随時子宮内膜組織診、MRI、超音波検査、腫瘍マーカー検査などを行い、治療効果の評価・判定を行い慎重に治療を進めます。