胃がんを見つけるための検査について説明します。

飯田 修史飯田 修史 医師足立外科胃腸内科医院 院長

胃がんとはどんな病気か?

胃がんは胃粘膜上皮から発生する悪性腫瘍で、発生要因としてピロリ菌(Helicobacter pylori)感染が最も重要です。除菌治療の普及や衛生状態の向上により保菌率は低下し、我が国では男女とも胃がんの罹患数は減少傾向です。

胃壁は内側から粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、(固有)筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜の6層により構成されています。

粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、(固有)筋層、漿膜(しょうまく)下層、漿膜

胃の内側の粘膜から発生した「がん」は胃壁の上下方向、水平方向にひろがっていきます。胃がんの浸潤が粘膜または粘膜のすぐ下の層(粘膜下層)にとどまっているものを「早期胃がん」といい、粘膜の下にある筋肉(固有筋層)よりも深く浸潤しているものを「進行胃がん」といいます。

臓器の外に病変が広がることを「転移」といいます。転移にはリンパの流れにのってリンパ節にたどりつき、そこで増殖する「リンパ節転移」、血液の流れにのって他の臓器へたどりつき、そこで増殖する「血行性転移」、がん細胞が臓器の壁を越え、おなかの中(腹腔)にちらばる「腹膜転移(播種)」などがあります。

どんな症状がでるのか?

早期胃がんはほとんどが無症状で、検診などで偶然発見されることが多いです。

一方、進行胃がんでは体重減少、体のだるさ、食欲低下、貧血、腹痛、腹部不快感、嘔吐、吐血や黒色便などの症状が出現します。

胃がんを見つけるにはどんな検査が必要か?

胃がんを見つけるにはどんな検査が必要か?
早期発見のためには胃がん検診として推奨されている胃カメラ(上部消化管内視鏡)バリウムによる胃透視(造影X線検査)造影CT検査が最も有用です。
CEAやCA19-9などの腫瘍マーカーは再発診断の補助として用いられますが胃癌の早期発見には不向きです。
胃内視鏡検査は病巣部を直接観察でき、病巣の位置や大きさ、形、色調などから、病巣の深達度が判断でき、鉗子と言われる処置具を使って直接組織を採取し調べることができます。

どんな治療があるのか?

胃壁のどこまで癌が進行しているのか?、リンパ節転移や血行性転移、腹膜播種はあるか?など、がんがどこまで広がっているのかを総合的に判断し臨床病期(Stage)を決定します。治療方法は臨床病期(Stage)により異なります。

治療の原則は内視鏡的または外科的な切除となります。早期がんの一部に対し内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)などの内視鏡による切除が選択されます。

内視鏡的治療の適応とならない切除可能胃癌に対しては外科手術が選択されます。病変が胃のどの部分に位置するか、胃壁のどこまで癌が進行しているのか等を総合的に判断し手術術式を決定します。

胃の入り口部分の2/3を切除する「噴門側胃切除術」、胃の出口部分の2/3を切除する「幽門側胃切除術」、胃をすべて切除する「胃全摘術」などの手術術式があります。

また切除不能胃癌もしくは再発胃癌に対しては化学療法が行われます。

どの病気にもいえることですが、早期発見、早期治療が重要ですので、少しでも気になる症状がある方、健診で異常を指摘された方は胃カメラ等の検査を受けるようにしてください。