健診(健康診断)で高血圧を指摘されたらどうしますか?|140-160/90-100mmHgは、イエローカード

椎木 俊明椎木 俊明 医師椎木内科循環器科 院長

高血圧とは?

健診での血圧はその場限りで1回から2回測定するため随時血圧と言います。

一方、自宅でマイ血圧計を購入して毎日測定する場合は家庭血圧と言います。自ずと測定回数が増えれば増えるほど正確性や信頼性が増してきます。

よって高血圧と診断する場合、健診と自宅での測定値は異なります。一般的には自宅での血圧の方が健診での随時血圧よりも低めに設定されます。その測定値は数年に一度ガイドラインというルールにより決められていますが、大雑把に言えば自宅での高血圧は135/85mmHg以上健診では140/90mmHg以上とやや差があり注意が必要です。

自宅での高血圧は135/85mmHg以上で健診では140/90mmHg以上とやや差があり注意が必要です

よって健診で高血圧を指摘されても一概に真の高血圧かどうかは判断できません。ですから健診で160/100mmHg以上と指摘された場合はレッドカードですので急いで医療機関の受診が必要ですが、140-160/90-100mmHgの場合はイエローカードでまずは自宅で血圧を測定して医療機関を受診されると医師から的確なアドバイスがもらえます。

自宅での血圧が健診の時ほど高くないこともありますので、健診の血圧と自宅での血圧とを比較して高血圧の専門医は適切な食事療法や運動療法を指導します。それでも血圧が高値の場合に降圧剤の内服を開始します。健診の血圧がレッドカードなら受診当日から薬開始もありますが、イエローカードの場合は薬を飲む前に生活習慣の改善などしなければならないことがあります。

運動や食事療法をしっかりすれば薬の内服を先送りできることもありますが、現実的にはなかなか困難です。

自宅での血圧について

それでは自宅での血圧に話題を変えましょう。

白衣高血圧とは?

健診ではいつもドキドキして血圧が高くなって高血圧と診断されて精密検査に回されてくる患者さんがよくいらっしゃいます。これを白衣高血圧といいます。また逆もあるわけです。つまり健診ではいつも正常と言われているのに自宅で測定すると高い場合です。

血圧の管理

これをいつも人前では仮面をかぶったように真の姿を見せないが、自宅で仮面を脱ぐと実は高血圧だったという意味で仮面高血圧と言います。どちらも家庭で血圧を自分で測定しなければわかりません。

それでもわからなければ24時間ホルター血圧計といって腕に巻いて24時間測定する手段もあります。お風呂には入れませんが、その他はほとんど日常生活をそのまましていただきます。ただし腕に布性のカフを巻きっぱなしにしますので汗をかきやすい夏場にはつらいものがあります。

また冬場は寒くてたくさん服を重ね着しますので腕がモコモコになって検査しづらいという側面もあります。ですから当院でも家庭で血圧をチェックしてもはっきりと高血圧がわからない患者さんにホルター血圧測定を実施していましたが、何せ一晩中巻きっぱなしで30分ごとに腕が加圧されますので緊張して眠れなくて通常より更に高くなり検査した意味がない場合もありました。

以前はこちらから勧めてホルター血圧測定をしていましたが、患者さんからの評判はあまりよろしくないので、最近は当院でもホルター血圧測定はせずに専ら自宅で朝起床時と夜寝る前に血圧を測定していただきそのデータを記入して診察時にチェックするようにしています。

白衣高血圧は簡単にいえばあがり症です。人前に出るとドキドキと緊張して交感神経が高ぶって血圧が上昇します。しかし自宅に帰って血圧を測定すると正常なのです。もちろん正常血圧の方と比べれば将来高血圧になりやすいことは証明されていますが、「もうちょっと薬を飲まないで経過をみましょうか」と申し上げることが多いのも事実です。

しかしこの判断もしっかりと家庭で血圧を測定して診療所での血圧と比較することで的確な判断が可能となるのです。たまに診療所での収縮期血圧が180mmHgを超えてビックリする患者さんもいますが、自宅では収縮期血圧が120mmHgと正常なケースもあり、医師側からすれば薬を飲ませたい半面、患者さんからはもう少し飲まずに様子をみたいと言われることもあります。

仮面高血圧とは?

一方、仮面高血圧は白衣高血圧よりも少ないのですが、高血圧による臓器の障害つまり心臓や腎臓や脳などの臓器に圧力がかかり過ぎて病気をきたしやすいといわれていて積極的に治療をしなければなりませんので、患者さんがもう少し薬を飲みたくないと言われても医師側は薬を飲まないと危険ですので飲んでくださいと押し切ることもあります。

いずれにせよ、自宅でマイ血圧計により診断ができますので、自宅での血圧測定を面倒くさがらずに測定していただくようにお勧めしています。

自宅で血圧測定

血圧が上がる理由と療法

さてそれではこのような白衣高血圧や仮面高血圧を含めて高血圧と診断されたらどうすればよいのでしょうか?という質問をよく受けます。勿論、「薬を飲めばいいですよ」と言うだけでは芸がありません。まず血圧が上がる理由を考えてみましょう。

塩分の摂り過ぎ?老化?

例えば塩分の摂り過ぎにより体の中の水分が多くなり血圧が上がるのか、それとも老化により血管自体が固くなって血圧が上がるのか、または別の理由もあります。それから塩分を摂り過ぎているかどうかを本人からじっくりと話を聞かなければなりません。食事の内容や好みをお聞きしますと意外に塩分を摂り過ぎていることが判明することがよくあります。

たとえば味噌や醤油など和食中心の場合は塩分過多になりやすいですし、ラーメンやうどんの汁を全て飲み干す方は明らかに塩分過多になります。また味自体が濃い食事や外食の多い方も塩分過多が多いです。そして医師や管理栄養士が食事指導として塩分過多についてどのような食事をすればベストかというお話をします。

塩分の摂り過ぎは生活習慣病の中でも特に高血圧に影響します。

当院では管理栄養士がいませんので私が説明します。大きな病院では専属の管理栄養士がいますので食事指導に関しては具体的にどのような料理に塩分が多く含まれるかなど詳細に教えてもらえます。

その間約1-2か月は薬を処方せずに経過をみることが本当はベストなのです。勿論それまで待てない猶予のない高血圧の患者さんには薬を処方しますが、通常は待ちます。

自分の病状を自分が理解することが大事です

なぜならば患者さん本人が自分の体の状態をしっかりと把握していただかなければ食事療法だろうが薬物療法だろうが長続きしないからです。また薬を開始して血圧が下がったら治癒したと勘違いして自己判断で中止してしまう人も多いのです。

それでは10年20年先に起こるであろう脳卒中や心筋梗塞などを予防できません。三つ子の魂百までと言いますが、最初の数か月間の本人さんへの血圧に対しる自己の動機付けがとても大切なのです。

なかなかお互いに根気がいりますが、そこをクリアできて自分の病状をしっかり理解していただいた患者さんは当院では末永く良好な関係が築くことができます。