塩分の摂り過ぎは生活習慣病の中でも特に高血圧に影響します。

椎木 俊明椎木 俊明 医師椎木内科循環器科 院長

なぜ?塩分を摂りすぎると高血圧に?

塩分の摂り過ぎは生活習慣病の中でも特に高血圧に影響します。

高血圧の塩分制限の話の前に皆さんの理解を深めるために生物の進化からお話したいと思います。生物の進化の過程では最初は海から生物が生まれます。海ですので塩と水はふんだんにあります。

しかし生物が陸上へ上がっていくと体の器官は不足する塩と水を貯め込むように発達していきます。また食べ物の中には野菜など一部を除いて少量の塩分はほとんどの食物に含まれていますので食べ物がある限り塩不足になることはありません。

実際にアフリカの一部の民族は1日に2-3gとほとんど塩を摂取しなくてもちゃんと生きています。更にその民族には高血圧があまりいません。

つまり生きていく上での最低限の塩さえ摂取できれば残りは体にとって余分な塩となり水を一緒に貯め込むために高血圧という厄介な現代病になってしまうのです。

ですから子供でも大人でも塩分摂取量が少なければ少ないほど将来高血圧は発症しにくいのです。一方で狩猟民族は飢餓との戦いに勝つために体は蛋白質や脂肪を貯めこむ能力を持つようになりますが、やがて農耕民族になるにつれて食料の供給が安定的となりそれほど体に貯め込む必要がなくなります。

食事における塩分摂取量

食習慣は生活習慣

それにも関わらずに食べ過ぎるのが現代の生活習慣病で脂質異常や糖尿病になるのです。ですから塩とそれ以外の栄養素は少し分けて考える必要があります。

食習慣は生活習慣

三つ子の魂百までという諺がありますが、正に塩分摂取の習慣は親が子供に教えるものです。なぜなら親の味付けで子供の味覚がある程度確立されるからです。

つまり辛い物が好きな親に育てられた子供はやはり辛い物を普通に食べます。煙草を吸う親を見て育った子供に喫煙者が多いのと同じです。食育という言葉が流行っていますが、塩分摂取も重要です。

1日の塩分摂取量

塩分摂取は1日に6g程度に抑えればよいのですが、味噌や醤油などの和食中心の食事では塩分過多になりやすいのです。実際の6gの塩の量はほんの小さじ1杯しかありません。

次に1日塩分摂取は6g程度が理想ですが、現実は10g超えている場合も多いのです。和食はヘルシー食として海外で人気ですが、一方で塩の摂りすぎになりやすいのです。

1日の食事における塩分量

1日の食事の流れを塩分量に換算してみましょう。

朝食で味噌汁をのめば1g、醤油をかけた漬物を食べて、塩鮭でも食べようものなら軽く5gオーバーといったところです。昼食でラーメンを汁まで飲み干したら、軽く1日量の8g程度までいってしまいます。

塩分の摂り過ぎは生活習慣病の中でも特に高血圧に影響します。

そして全てを足し算してみてください。1日の塩分摂取量を10g以下にすることでさえもいかに大変なことかがわかるはずです。また意外に思われるかもしれませんが、アイスにも塩が入っていることはご存知でしょうか。

なぜ?と思われる方には「お婆ちゃんがあんこを入れておはぎを作るときに少し塩を入れて味をひきたたせるのと一緒」ですし「夏にスイカをかぶりつく前に塩をふりかけるのと一緒」です。これが実生活から学ぶ勉強でしょう。

また菓子袋にNaOOmgと書かれている場合、塩分量に換算する場合は×2.5するとおおよその数値が出ます。この計算の詳細は省略しますが、原子量、分子量から計算するとそのようになるのです。例えばNa1000mgと記入されていたら塩分2.5gといった具合です。

最近はネットで検索をすればすぐに食事の中の塩分含有量などがわかります。しかし皆さんがそれを見てもなかなか実行に移すとなると至難の業になります。

対策:薬を飲む前に、、、

それではどうすればよいか?それは非常に難しい問題ですが、個人的な意見としては禁煙と同じで何回もチャレンジして失敗してもいいから諦めずに継続することです。

そして高血圧でも軽症のうちから安易に薬に頼るのではなくしっかりとした医学知識で患者さんをサポートすることです。

「薬を飲むことは非常に大切なことですが、その前にもっとやらなければいけないことはありませんか?」といつも患者さんに問いかけて患者さん自身が考えて行動するように促すことが医師として高血圧に関わる最初の一歩だと思っています。