不眠|安易に薬に頼るのは危険です 

腰原 公人腰原 公人 医師かがやきクリニック川口院長

その睡眠薬必要ですか?

薬に頼りすぎ?

以前、新聞に「その睡眠薬必要ですか?」という健康に関する特集記事の掲載がありました。

薬に頼りすぎていることが指摘されています。日本で処方されている睡眠薬の7割は、欧米ではすでに主流ではないベンゾジアゼピン系薬です。デパス(エチゾラム:世界の主要国ではイタリア、韓国、日本のみしか使われていない)も含めると世界で最も汎用されている国です。

平成27年秋に開催された薬害オンブズパースン会議より、厚生労働大臣宛にベンゾジアゼンピン系薬の依存症・離脱症状に関する添付文書追加記載の要望を、また学会に対して、副作用、薬剤の力価、耐性、離脱症候群(中止による不安や不眠の悪化)に関しての医療者への教育周知を訴える要望書が出されました。

不眠|安易に薬に頼るのは危険です 

睡眠剤・安定剤の強さと効力持続時間

眠気は神経終末から分泌されるGABAが、受容体に結合し、塩素イオンが流入することで生じます。薬剤を用いるとその流入が助けられて眠気を誘発します。

ただし、効きにくいからと短時間導入型の薬を併用しても薬の結合部位は飽和状態となっていて、決して効果が強くなるわけではありません。むしろ効果が遷延して転倒などのリスクや記憶障害などの副作用や薬剤同士の相互作用のリスクが増します。類似した薬剤結合部位が神経にはあって、その結果、筋弛緩作用も生じてしまいます。

不眠|安易に薬に頼るのは危険です 

薬を飲む前に、確認すべきこと

例えばデパス内服者の6%弱に転倒歴があるという報告もあります。半減期が短く、力価の強いものは睡眠に導入されていく感覚から、依存症になりやすく、また4か月以上使用後に内服を中断すると不安の増強、不眠の悪化、振戦や耳鳴り、ひどい場合には妄想や幻覚などが出現することもあります(離脱症候群)。

安易に薬に頼らず、まず眠れる環境を整え、服薬時には睡眠日誌をつけて、病状をしっかりと医師と相談しましょう。中止するときは医師と相談して、適切な漸減方法で薬を減らしていきましょう。

薬を飲む前に確認すること

まとめ

体内時計を保ちましょう

  • 休日でも起床時間を1時間前後のずれにとどめましょう。
  • 起きたら日光を浴びましょう(部屋のカーテンを開ける)。
  • 20分以上の昼寝は控えましょう。

気持ちをリラックスさせましょう

  • 床に入ってから寝ようとしない、眠くなったら床に。
  • 習慣的入眠時刻の2~4時間前は最も眠りにくいです。
  • 床に入った状態でテレビや携帯などはしない。
  • 20分しても寝つけないときは一旦、床から離れましょう。

規則正しい食事と運動を心掛けましょう

  • 夕食後のカフェインや寝酒は控えましょう。
  • 適度な運動を心掛けましょう。
  • 就床直前の熱い風呂への入浴は控えましょう。

夕食後に眠剤をすぐに飲ませる施設があるようです。薬は習慣性入眠時刻より、早い時間に眠るために使用するものではありません、効果が出にくく、副作用のみ出やすくなります。