血液のがん・白血病は治るの?|年間人口10万人中、男性11.4人、女性7.9人が発症

腰原 公人腰原 公人 医師かがやきクリニック川口院長

白血病について

白血球の役割

白血病、血液のがん、この言葉を聞くと恐ろしいというイメージが強い病気です。国立がん研究センターの登録では、年間人口10万人中、男性11.4人、女性7.9人が発症すると言われています。最近では水泳会の池江璃花子さん、過去に芸能界では渡辺謙さん、夏目雅子さんなどが罹られたことで知られています。

そもそも血液は体全体を巡りながら、酸素や栄養を運んでいます。さらに細胞から老廃物を受け取り、肝臓や腎臓などの人体の処理工場へ運ぶ役割も演じています。と同時に血液の中の白血球は体の隅々で起きている状況を監視しつつ、細菌などの病原体がいれば好中球が退治に向かいます。

さらに単球やリンパ球が病原体を認識し、他の細胞へのシグナルを出したり、その情報を記憶し抗体を作ります。抗体は同じ病原体が次に侵入してきた際に、すばやく体を守る免疫機能を効率よく発揮させる役割を担っています。これらの白血球には各々に特徴的な生体内での役割があるのです。

白血球の役割

血液中の白血球とリンパ球

体を守る免疫に大きく関与している血液中の白血球とリンパ球が、自身の増殖の制御機能を失うタイプの白血病について、簡単に紹介します。どちらの細胞ももともとは骨の芯である骨髄にある造血幹細胞から、分化して生まれてきたものです。

血液中の白血球とリンパ球

白血病の分類

造血幹細胞は骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれて、骨髄系幹細胞からは顆粒球や単球が作られ、リンパ系幹細胞からリンパ球が作られます。なお、図では省略しておりますが、骨髄系幹細胞からは赤血球や血小板も作られています。

白血病には主にこの骨髄系幹細胞由来の血球が癌化するものリンパ系幹細胞由来の血球が癌化するもの、そして病態の進行の速度が速い急性白血病ゆっくりな慢性白血病との組み合わせで分類されています。

いろいろなタイプの白血病

白血病の検査、治療

急性骨髄性白血病について

今回は白血病の中で最も発病頻度が多い急性骨髄性白血病について説明します。

今回は白血病の中で最も発病頻度が多い急性骨髄性白血病について説明します。

全年齢層でみられ、特に40歳以降に増加します。発熱や息切れなどの貧血症状で発病し、その中の単球性では歯ぐきが腫れたり、肝臓や脾臓の腫れでおなかが張ったり、痛みがでる臓器への浸潤が多いのが特徴です。

検査

検査では貧血や血小板数の減少と同時に白血球数の異常(増加から減少まである)を認めます。そして本来通常の採血検査で見られない芽球という幼若な血球(血球分化の過程で骨髄の中で認める)を認めることが多くあります。

治療

治療法としては寛解導入療法として、イダルビシンとシタラビンという抗がん剤の併用療法を2回行います。

その上で地固め療法として大量のシタラビンを用いた化学療法などを3コース行います。治療によって骨髄抑制、すなわち顆粒球などの白血球や赤血球、血小板の産生が極度に抑えられるのです。強い疲労感、息切れ、さらには感染症にも罹りやすくなります。

そのため治療中、無菌室を利用したり、G-CSF(顆粒球コロニー形成刺激因子製剤:骨髄中の好中球の分化・増殖を促す作用がある)の注射を定期的に行います。また赤血球や血小板の輸血も重要な補助療法となります。

すべてのがんが消失し、新たながんが出現していない状態になる完全寛解率は80%前後と言われています。ただし再発もありますが、より多くのケースで、造血幹細胞移植が行われるようなって、全体の生存率も50%前後に増加しています。

急性前骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病の約1割を占め、やや若年者に多い傾向があります。骨髄や末梢血液中で前骨髄球が増加する特徴があり、この血球はトロンボプラスチンという血液凝固に関連する物質と似た性質を持っているため、皮下出血、鼻出血、過多月経などの出血傾向を起こしやすい最も予後の悪い白血病として知られていました。

しかし、血液凝固を抑えるビタミンAの誘導体であるオールトランス型レチノイン酸(ATRA:All-trans Retinoic Acid)をアントラサイクリン系の化学療法と併用して、寛解導入療法を行うようになって、治療効果がかなりよくなりました。
 

維持療法

その後、長期にわたり予後を改善するために、地固め療法として、アントラサイクリン系の化学療法を2から3コース行うのです。さらに維持療法として、それまでの治療経過をもとに決められた治療を3か月ごとに2週間行い、2年間継続するのです。

維持療法

これらの治療の間の補助療法として、赤血球や血小板の輸血も必要ですが、とくに重要なのがDIC(播種性血管内凝固症候群)による出血傾向をコントロールしていくことです。

ATRAと化学療法の併用によって、完全寛解率は95%前後と高いものです。ただし再発も4分の1に見られ、全生存率は8割弱と言われています。

なお、今回紹介した治療法は65歳未満の若い人での代表的な治療の流れになります。65歳以上の高齢者では全身状態や合併症を考慮して、各々に違った治療法を慎重に検討していきます。

患者さんと共に

研修医時代に白血病の方が入院している病棟で先輩の医師とともに診療を行った経験がありますが、その先輩は一人で大勢の患者さんの闘病を支えるため、早朝から深夜近くまで、日曜日も病院に詰めておられました。

患者さんと共に、長期に渡り苦しい闘病生活を支えておられた姿勢と先輩の笑顔が今でも脳裏に浮かんできます。多くの白血病患者さんたちに慕われていたその先輩は、過労のため病いに倒れ、現在は天国から闘病生活を送られている患者さんたちを励ますように静かな視線で見守っておられます。