いくつかあるインフルエンザの薬はどう違う?|現在使えるインフルエンザの治療薬は5種類あります。

腰原 公人腰原 公人 医師かがやきクリニック川口院長

薬による治療効果

インフルエンザが毎年、冬の乾燥する時期に流行します。インフルエンザに罹患してしまったら、医療機関を受診して薬をもらう人が多いと思います。薬を使うことで、解熱が1日半ほど早くなり易疲労感などの体調不良も3日近く早く改善します。

また肺炎や入院などの病状の重症化を防ぐことが判っています。

インフルエンザの薬について

薬の特徴について

現在使えるインフルエンザの治療薬は5種類あります。オセルタミビル(タミフル)が最も使用実績データが世界的に多い薬剤です。5歳以下では吸入薬を確実に吸い込むことが困難なため、小児用ドライシロップがあり(1回2mg/kg)、広く使用されています。

またザナミビル(リレンザ)ラニナビル(イナビル)は吸入薬のため、全身臓器への移行は少なく、感染部位である上気道粘膜に高濃度に散布される利点はありますが、逆に気管支喘息や慢性の呼吸器疾患患者においては、気管支攣縮を誘発することがあり使用できないケースもあります。

ただしザナミビル(リレンザ)は、B型インフルエンザに対する解熱効果はオセルタミビル(タミフル)よりすぐれています。ラニナビル(イナビル)は、単回吸入の利便性はありますが、ザナミビル(リレンザ)と比較して小児において二峰性発熱が多いことが知られています。

特徴について

新しい薬

1回だけの内服でいいゾフルーザ

2018年3月「先駆け審査指定制度」に則り、バロキサビル マルボキシル(商品名ゾフルーザ)という新しい抗インフルエンザ薬がスピード承認されました。

従来の抗インフルエンザ薬とは作用機序が違い、ウイルスが感染後の細胞内での増殖過程であるmRNA合成を阻害することでその増殖過程を阻害する働きがあります。

従って感染後の内服開始時期に関係なく、病態の重症化を抑制する効果も期待したくなります。現在のところ、国内における臨床試験で、12歳以上においてオセルタミビルと同等の効果が確認されています。

また65歳以上の症例やB型インフルエンザに関する臨床試験データはまだ十分にありません。腎機能障害患者においても容量調整が必要ないことと、1回だけの内服でいいことは、この薬の利点です。

ただし、まだ臨床試験症例数が少ないことや、従来の抗インフルエンザ薬との作用機序が違うという特徴から、従来の薬剤で効果が期待できない症例などに特化して使いながら、今後の臨床におけるデータを蓄積しつつ、この新薬をより有効に活用できる条件を見極めていく必要があります。

静脈注射薬:ペラミビル

ペラミビルは静脈注射薬で、通常1回投与ですが、気道における濃度の低下も早い傾向があり、反復投与が必要なことがあります。点滴注射のため、内服や吸入のできない重症患者に使いやすい薬剤で、肺炎の合併や入院加療が必要な病態に適しています。

反面、投与時に医療機関に滞在する時間が長くなるため、院内感染防止の観点から、経口可能な外来患者さんには積極的に使うべきではありません。そして新薬ほどお薬代が高くなることも薬を選ぶときに理解しておくべきポイントです。