過呼吸、過換気症候群、パニック発作と対応法

鈴木 朋久鈴木 朋久 医師いしやまクリニック 院長

様々な症状

パニック障害

突然、何の誘引もなく、呼吸ができないくらい息苦しくなり、動悸がし、冷や汗が湧いてきて、今にも死ぬんじゃないかという気持ちに襲われる。

場合によっては救急受診(救急車を要請することも稀ではない)することもあるが、受診する頃には症状も治ってしまい、医師からは冷めた態度で様々な検査をされるも異常は見当たらず、精神的なものでしょうと帰宅を促される。

一旦症状が治まっても、同じような症状がまた起こるんじゃないかという不安に怯えながら過ごさなければならなかったり、症状が出ては困るような場面を極端に避けるような生活を強いられる。

これらはいわゆる、パニック障害(パニック発作、予期不安)、広場恐怖というものですが、こういった症状や経験をお持ちの方は少なくありません。私のクリニックに来られる患者様の中でも上位を占めるくらいの割合でおられます。

過呼吸、過換気症候群について

パニック発作の中でも特に多い症状が、「過呼吸」発作です。そこでまずは、過呼吸の病態についての説明をしましょう。

血液中(動脈)の酸素の量をPaO2、二酸化炭素の量をPaCO2と呼びます。とてもリラックスした状態(呼吸数:12回/分 くらい)でのPaO2は96くらい、PaCO2は40くらいです。

これに対して、パニック発作時(呼吸数:60〜70回/分 くらい)でのPaO2はだいたい110以上、PaCO2はだいたい30以下です。実際の苦しさと違い血液中(動脈)の酸素は足りすぎているくらいですが想像もつかないと思います。

そこで、苦しさを何とかしようとして余計に頑張って呼吸をしようとする(呼吸数:90〜100回/分 くらい)とPaO2はだいたい120以上、PaCO2はだいたい25以下となります。 

この段階では脳が混乱し身体が悲鳴をあげていますので、自分では何も対処できなくなり救急要請、、、という流れになります。もう一度確認になりますが、心筋梗塞などの原因が明確な身体疾患を除いて、パニック発作で死ぬことはまずありません。

対処方法

過呼吸、過換気症候群、パニック発作と対応法
そしてこの過呼吸発作への対応方法として「呼吸法」というものがあります。
この方法は今からでもすぐに自分で取り組め、また効果が出やすいので広く一般的に用いられています。

「え、お薬じゃないの?」 「よく、頓服を飲んだらいいよと教えてもらったりするけど・・・。」 
「内科で安定剤を出してもらったけど良くならない。」「有酸素運動が良いと聞いたことがあるのですが。」

確かに呼吸法では即効性は期待できません。頓服が効くことも確かです。より重症であれば抗うつ薬が必要なことも多いです。ただ、症状がまだ軽症で、お薬がどうしても嫌だという場合にはお勧めします。

呼吸法による狙いは、生理的にリラックス状態をキープする事で、脳に「リラックスしている状態ですよ」という思い込ませることです。

ポイントは、人から見て肩が動いていない程度で適当に呼吸する、非常に滑らかで浅い軽めの呼吸で10秒間程度で吐いて吸う(吐くのが先)、1回10分を1日に朝昼晩の3回、練習して下さい。そして、発作や不安感が生じたら練習した呼吸法を試してください。最初から完璧でなくて構いません、5分以内に収まることを目標にやってみて下さい。