人前で発表するときに汗が出たり体が震える、、、あがり症(社交不安症)の治療について
鈴木 朋久 医師いしやまクリニック 院長あがり症とその治療
あがり症について
人前で発表するとき、人前に出なくてはいけないとき。そんなときに、汗が出てきたり、体が震えてきたり、赤面したり、ドキドキと心臓の音が聞こえるくらい緊張してしまう。
これらの症状はあがり症(対人恐怖症)によくあるもので、診断名としてDSM -5では社交不安症 / 社交不安障害(社交恐怖)(SAD Social Anxiety Disorder, Social Phobia)に該当します。症状によっては視線恐怖、赤面恐怖、振戦恐怖とも呼ばれたりします。
多くが10代前半という比較的若年から発症しますので、性格の問題だとか慣れの問題だとかと思われがちですが、れっきとした病名もある精神疾患で、不安症群の中の一つです。
不安症とは、必要以上に不安を強く感じてしまい、不安に怯えて安全行動や回避行動(あがり症では視線を合わせない、スピーチを避けるなど)をとってしまうことで日常生活に支障をきたす疾患です。
治療について
お薬の治療としては、「抗うつ薬」であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が主に処方されます。SSRIでセロトニンの働きを調整し不安症状を和らげます。内服後1週間くらいの比較的早期から、効果を実感していただけることもあります。他にも、頓服として抗不安薬(ベンゾジアゼピン系薬剤(以下、BZ系薬剤とする))や循環作動薬(プロプラノロール(喘息をお持ちの方は禁忌))が処方されることも少なくありません。
よくあるのが、「内科で抗不安薬(軽い安定剤と言われて)を頓服として処方されました。」とおっしゃって来られる方です。比較的軽症の方が多く、そういう方に一からお薬の説明はしてみるものの、「やっぱり「抗うつ薬」はちょっと抵抗が。。。毎日飲むのもちょっと。。。頓服みたいに軽いものならまだ飲めます。」となりがちです。
昨今取り沙汰されているBZ系薬剤の依存性や耐性について説明するも、即効性を求められる方が多く非常に悩ましいのが現状です。
お薬はちょっと、、、薬以外の方法で良くなれば、、、という方に
ご安心下さい。治療としては、お薬によるものが一般的でしたが、最近では精神療法の一つである『認知行動療法』が、臨床試験においてお薬と同様、もしくはそれ以上に高い有効性を持つことが証明されてきております。うつ病に関しては特別に教育を受けた医師のもとでは既に保険適応があるくらいです。
もちろん、お薬と併用しても問題はありません。お薬で効果が不十分な方でも、『認知行動療法』を併用することで改善が期待できることもあります。
また、効果だけでなく再発率が低いことも魅力的です。お薬と違って即効性は期待できませんが、お薬にはずっと飲み続ける煩わしさもあり、長期的なスパンで考えてどちらが有用なのかというのも指標になるかもしれません。
通院頻度としては、治療者のスキルや症状の重症度にもよりますが、月に1〜4回、1回あたり30〜60分、だいたい3〜6ヶ月程度継続して行うことが多いです。
最近では書店でも関連図書を見受けますのでご興味のある方は目を通していただくか、現在の主治医と相談していただいてもいいかもしれません(主治医の力量が試されます)。
まとめ
- あがり症は性格の問題ではなく社交不安症という病気
- お薬は抗うつ薬である「SSRI」を主に用いる
- お薬以外の治療としては「認知行動療法」を行う