目が急に見えにくくなるのはどんな病気が関係しているの?
和田 光正 医師和田眼科クリニック 院長それまで見えていたものが急に見えにくくなるというのは、他のどんな症状よりも大変不安になるものです。見えにくくなる目の病気はたくさんありますが、急に見えにくくなるものは、ほとんどが血管に関係しているもので、なかには命に関わる病気のこともあります。今回は目が急に見えにくくなった時はどんな病気の可能性があるかをお伝えします。
1.ものをみるための経路
目はカメラと同じような構造になっており、レンズ=角膜、水晶体、絞り=虹彩、レンズとフイルムの間=硝子体、フイルム=網膜のような関係にあります。今はデジタルカメラが多いので、画像は現像しなくても、カメラ内で処理してくれますが、目の場合は網膜から視神経を経て、脳内の視覚中枢と言われるところに情報が送られ、脳の中で見えたものを認識します。
ですから、目が見えにくくなる原因は、目の中の異常が原因となることもあれば、脳内の異常が原因となることもあります。
2.急に見えにくくなる原因は?
見えにくくなるというのは、上記のものを見る経路のうちのどこかに異常が起こった時であると言えますが、主に3つの原因が考えられます。
- 光の通り道の元々は透明であった場所がにごる異常
- フィルムの役目をしている網膜の異常
- 目から脳に情報をおくる神経の異常
上記の場所で何かがおこり、その結果見えにくくなるのですが、全てではありませんが、突然おこるものは大抵のものが血管に関係している異常と考えてもらっていいと思います。それは血管が詰まる、血管が破れるなどによっておこります。
3.部位別の原因について
急に見えにくくなった場合にはどのような疾患が考えられるか、部位別に説明します。
3-1 光の通り道が濁る異常
光は前から角膜→水晶体→硝子体→網膜の順に進んでいきますが、そのどこかが濁ると見えにくくなります。この経路の異常で急に見えにくくなる原因として多いのは、硝子体出血です。
硝子体は水晶体と網膜の間の場所で、ゼリー状のものがその部位を満たしていますが、その中に出血がおこります。その原因は糖尿病のためにおこる糖尿病網膜症が最も多く、その他には網膜裂孔、網膜動脈瘤、加齢黄斑変性や以前からあった疾患(網膜静脈閉塞症など)が原因でできた新生血管が破綻しておこる場合もあります。
3-2 網膜の異常
フィルムの役目をしている網膜に異常がおこると光を正常に感知できなくなり見えにくくなります。網膜の動脈が閉塞する網膜動脈閉塞症や、網膜の静脈が閉塞する網膜静脈閉塞症が代表的な疾患です。
上にあげた加齢黄斑変性や網膜動脈瘤が原因で網膜内や網膜の下に出血を来すこともあります。
3-3 視神経や脳内の異常
網膜から脳に情報を送る神経が障害されると、脳への信号が正常に伝達されなくなり見えにくくなります。虚血性視神経症は視神経内の動脈が閉塞する疾患です。
その原因は、血栓や動脈硬化物質からはがれた小片が視神経内の動脈に移動し詰まることです。視神経内の動脈は網膜の動脈につながっているので、上記のものが網膜動脈で詰まると網膜動脈閉塞症になります。
その他には、脳卒中や一過性脳虚血発作などが原因となることもあり、これは命に関わることもありますので、早急な対応が必要になります。
4.まとめ
突然の視力低下は緊急事態で、原因のほとんどは重篤である可能性が高いものになります。ですから、突然見えにくくなった時は早急に眼科医の診察を受けて頂く必要がありますし、場合によっては眼科以外の診療科を受診して頂いて詳しく調べる必要になることもあります。