生理前のイライラ、どうにかならない?月経前症候群と抗うつ薬

鈴木 朋久鈴木 朋久 医師いしやまクリニック 院長

生理前のイライラ、どうにかならない?!

月経がくる時期に先行して、抑うつ、イライラ、気分の波、不安症状、睡眠や食欲の変化、集中困難、興味の低下、様々な身体症状が生じてしまう。

月経前の不快気分はごく一般的で個人差が大きいものですが、より重症であれば日常生活や社会生活に支障を来す方もおられます。人格が変わったと自分でも感じるくらいの方や、血縁家族で同じような症状を有する場合も見受けられます。

自分自身で症状を制御できずに圧倒されることで悩むことも多いかと思います。

月経前症候群(Premenstrual Syndrome, PMS)と月経前不快気分障害

月経前不快気分障害について

症状がより重篤であり、少なくともこの1年間ほとんどの月経前で同様の症状がある場合には、月経前不快気分障害(Premenstrual Dysphoric Disorder, PMDD)とDSM–5では診断されます(正確には2ヶ月間の前方視的評価が必要となります)。

PMSはPMDDに比べてより症状が軽度であり、感情症状を伴わないことも多いです。どちらも月経周期におけるホルモン変化に関連して生じるものです。

また、月経困難症とは症状を有する期間が異なります。困難症では月経開始時に症状が始まるのに対し、PMDDでは月経開始後数日間まで症状が遷延することはあっても、定義上は月経開始の前に始まります。

低用量ピルなどのホルモン療法を行っている方

低用量ピルなどのホルモン療法を行っている方の中にも、中等度から重度の月経前症状を認める方がおられます。ホルモン療法開始後に症状が出ている場合は、潜在的なPMDDというよりもホルモン療法の影響によることが考えられます。場合によってはホルモン療法を中止することも考慮します。

心療内科では

抗うつ薬であるSSRIについて

PMDDに対して、抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が症状を改善するという報告がなされています。本国採用薬としては調節放出型パロキセチン、セルトラリンが適応になります。
抗うつ薬であるSSRIについて

月経周期の期間中ずっと、もしくは黄体期(排卵と月経の間の2週間)のみに投与された場合はいずれにおいても、同等に有効であったとされています。ただし、妊娠の可能性がある場合は、SSRIの内服(特にパロキセチン)について慎重に検討しなければなりません。

また、エビデンスには乏しいですが、漢方薬を処方することも稀ではありません。運動やリラックスすることで症状が緩和されることもあります。

症状を増悪させる要因として

症状を増悪させる要因としては、低用量ピルなどの経口避妊薬、ストレス、運動不足、アルコール摂取、出産後、閉経期への移行中などが挙げられます。改善できる部分は見直してもらいます。

低用量ピルによる治療でうまくいっていない、もしくはひどくなってしまった方、未治療の方などは是非一度、心療内科に足を運んでみてはいかがでしょうか。

■まとめ

・月経前の病気にはPMSとPMDDがある
・PMSより重症なのがPMDD
・PMDDは抗うつ薬で改善することがある