胃がんの原因はピロリ菌|胃がん罹患者数は臓器別で第2位

品川 正治品川 正治 医師品川内科クリニック 院長

胃がん罹患者数は臓器別で第ニ位

胃がんにかかった人の数(罹患者数)、死亡者数を年齢別に見た場合、ともに40代後半から増加し始め、男女比では男性のほうが女性より高くなります。また、がんで亡くなった方を臓器別にみると胃がんは肺がんについで第二位となっています。
がんで亡くなった方を臓器別にみると胃がんは肺がんについで第二位
検診により胃がんは早期で見つかるようになり、胃がんの死亡率は減少しましたが、胃がんで亡くなる人の人数は1990年から大きく変化しておらず、毎年約5万人が胃がんで亡くなっています。すなわち、胃がんで亡くなる人数は減少していません。

ピロリ菌とは何でしょう?

みなさんはピロリ菌という菌の名前を聞いたことあるでしょうか?
ピロリ菌が胃がんの原因であることが最近の研究でわかってきました。すなわち、ピロリ菌を退治することで、胃がんになる確率を減らすことができます。

また、ピロリ菌が原因といわれる病気には、胃がんのほか、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、機能性デイスペプシア、特発性血小板減少性紫斑病などがあります。

二人の医師によって発見されたピロリ菌

ピロリ菌の正式名は、「ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)といいます。ヘリコバクターとは「らせん状の細菌」という意味です。オーストラリアの内科医であるバリー・マーシャルと病理医ロビン・ウオーレンという2人の医師によって発見されました。
ピロリ菌

1979年に病理専門医のウォーレンは、胃炎を起こしている患者の胃の粘膜にらせん形の菌がいることを発見しました。そこで、同じ病院に研修医としてやってきたマーシャルとともに、この菌が胃の中で生きていることを証明しようと研究を進めました。

1982年、二人はピロリ菌の培養に成功しました。さらに、マーシャルは培養したピロリ菌の固まりを自ら飲み込むという人体実験を行いました。10日目に胃の組織を取って調べると、急性胃炎がおこっており、そこにはあのらせん菌が存在していました。

ヘリコバクターとは?

「ヘリコバクター」の「ヘリコ」は「らせん形」を意味する「ヘリコイド」からきた言葉で、ヘリコプターの「ヘリコ」も同じ意味です。「バクター」は「細菌」を意味する「バクテリア」のことです。「ピロリ」とは、胃の出口である「幽門」(ゆうもん)のことで、ピロリ菌の多くがそのあたりで見つかっていることに由来します。

ピロリ菌の名前は「幽門にいるらせん形の細菌」という意味です。約5300年前のミイラからピロリ菌の遺伝子情報が見つけられ、ピロリ菌が新石器時代、約5300万前から存在していることがわかりました。ピロリ菌の感染について環境因子が大切であることがわかってきています。

ピロリ菌が最も感染しやすいのは乳幼児期

ピロリ菌が最も感染しやすいのは乳幼児期
例えば、先進国では感染率が発展途上国よりも低く、日本では60才以上で感染率が高くなっています。上下水道の整備が感染率を下げる一因と考えられています。ピロリ菌が最も感染しやすいのが、乳幼児期と言われています。

幼少期は胃酸の分泌による防御作用が未完成のため感染すると考えられています。衛生環境の整った地域では、家庭内感染が主な要因で、母親からの感染が主体であることが研究でわかっています。成人になれば胃酸による防御反応が確立しているため、コップの回し飲みや生水からの感染はほとんどありません。

拙著「ピロリ菌を知れば、人生はうまくいく! 胃がんで死なないために」より